愛を餌に罪は育つ
秋の凹凸のない滑らかな頬に触れ、唇をなぞった。


どこまでも怪しく甘い唇。



「私が何処に居ても必ず見つけ出してくれる?」

『あぁ、必ず見つけ出す』

「地獄に堕ちても、探しに来てくれる?」

『地獄だろうと火の海だろうと蕀の中だろうと、躊躇わず飛び込むよ』



地獄や天国が存在するなら、きっと私は地獄いき。


秋はきっと天国。


秋に抱き抱えられ、次に下ろされた場所は寝室のベッドの上だった。



『怖いなら電気を点けるが、どうする?』



意地悪な顔を向けられ、私は体を起こし秋をベッドの上に押し倒した。



「秋がいるから怖くない。だから明かりなんていらない」



秋のネクタイをほどきボタンに手をかけた。



「秋が欲しい――」

『もう全部美咲のものだ。好きにするといい』



初めて自分から秋を求めた。


快楽に歪む秋の顔はドキッとする程艶っぽい。


私以外の女にこの顔を見せたくない。


一緒にいる時間が増えるほど、独占欲も強くなる。


最終的にはいつも秋のペースになり、気付けば秋の体に溺れてしまっている。


本当は溺れさせたいのに。


いつだって秋には敵わない。


私、幸せだよ――だから、明日は一人で行ってくるね。


私が心の底から愛したのは秋が初めてだから――だから、守りたい。






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