愛を餌に罪は育つ
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――



日が短くなり、まだ夕方だというのにもう薄暗かった。


オフィス街を人にぶつからないよう気にしながら歩いた。


すれ違う人たちは疲れた顔をした人ばかり。


今の私はどんな顔してるんだろう。


私も周りの人からは同じ様に見られているんだろうか。


人気のない通りに入り、私は更に足を進めた。


小さな公園の前に止まっている白の乗用車が目に入った。


懐かしい――直ぐにそう感じた。


車が好きで二台持ってたよね。


私は最後に左手を見て指輪を外している事を確認して、助手席側の窓から中を覗いた。


中からドアを開けてくれて、私は車に乗り込んだ。



「久しぶり」

『美咲に会えなくて死にそうだった』

「生きて迎えにきてくれて良かった」



笑ってそう言うと、朝陽は車のエンジンをかけながら可笑しそうに笑っていた。


そして朝陽は車を発進させた。






< 361 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop