愛を餌に罪は育つ
背格好が似ていたから整形をしても成り立ったんだろうけど、朝陽にはあって彼にないものがあった。


朝陽は顎の裏辺りに変わった模様の痣があった。


でも貴方にはそれがなかった。


その痣は薄いもので見え辛い場所にあったから、普通に接しているだけなら気付かないだろう。


私も朝陽の彼女という立場になかったら気付かなかったかもしれない。


クリスマスの日の血に塗れた部屋。


そして惨殺された三人の姿は一生忘れないだろう。


血だらけの彼の顎裏に見えた薄らとした痣も――。


貴方は朝陽になりすまして私と一緒になるつもりだったかもしれないが、残念ながら私はクリスマスの前日、イブの日に朝陽にふられている。


最初から貴方の計画は無駄だったんだよ。


その無駄な計画の為に大切な人が殺された。


原因は私。


私が殺したも同然。


でもそのおかげで私は秋と親密な関係になれたのかもしれない。


ただ秘書をやっていたとしても、仕事上の付き合いで終わっていたかもしれない。


そう思うと少しは彼に感謝の気持ちを表してもいいかもしれない。


こんな事を誰かに言えば、酷い人間だと罵られるだろう。


だけど、どれだけ善人ぶっていても結局は人間誰しも自分が一番可愛いもので、それなら私は内に秘めた思いくらい正直でいたい。


自分の気持ちを誤魔化し、正しい解答を無理矢理導く必要なんてない。






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