愛を餌に罪は育つ
日が沈み始めた頃、ドアをノックする音が病室に響いた。



『具合はどんな感じ?』

「退屈」

『元気な証拠じゃん。って事で、一緒に食べよう』



元気な笑みを見せながら、ベッドの横にある椅子に腰かける翔太君。


差し出されたプリンを受け取った。



『プリン好きだったよね?』

「うん、大好き。ありがとう」



口の中に入れるととろけてしまう程滑らかなプリン。


甘いものを食べている時は幸せな気持ちになれる。



「今日笠原さんと山田さんが来てくれて、色々話聞いたよ」

『そっか――。起きたら知らない場所に居て、無理矢理睡眠薬まで飲まされて――怖かったよな』

「――うん」



私は抵抗しようと暴れた時に頬を打たれ、その時に身を守るため咄嗟にダッシュボードから零れ落ちた懐中電灯で彼を殴った事になっている。


私以外真実を知る人はいないから、私が喋らない限り誰にもばれないだろう。



『心の傷は中々癒えないかもしれないけど、とにかく顔だけでも早く元の綺麗な顔になるといいね』

「元からこんな顔だから大丈夫」



翔太君は可笑しそうに口を開けて笑った。


今はまだしんみりする時じゃない。


もう少しこの雰囲気を楽しみたい。


私の言葉に翔太君はいったいどんな反応を見せるだろうか。






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