愛を餌に罪は育つ
「梓とは上手くいってる?」

『今俺たち付き合ってるんだ』

「そうなの?」

『黙っててごめん。こんな状況だから言いにくくて――』



確かにこんな時に言い出しにくいよね。



「翔太君から切り出したの?」

『そうだよ』



翔太君は幸せのせいか口元を綻ばせ柔らかい顔をしている。


二人はお似合いだと思う。



「幸せ?」

『すっごく幸せだよ』

「結婚まで視野に入れてるの?」

『入れてるよ。梓はどうかわからないけど』



前までちゃん付けだったのに呼び捨てになっていて、本当に付き合い始めたんだと思った。


梓もきっと宮沢さんじゃなくて翔太って名前で呼んでるんだろうな。



「それなら死ぬ気で隠し通さないとね」

『――そうだね』



私が言っている隠すべき事と翔太君の頭に浮かんでいる事は別物だろう。



「梓の妹さんのお腹にいた子が実は翔太君の子供だって事――」



翔太君は目を見開き、瞳を揺らし動揺した。


そんな彼に私は微笑んで見せた。







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