愛を餌に罪は育つ
「女は死んじゃいましたけど、彼氏が他所の女との間にガキつくったと思ってるんで、別れるのも時間の問題だと思います」

『――え?』

「まさか俺が種提供したとは思わないでしょ。死んだ女も同意のもとだったんで問題ないです」



翔太君の顔が段々と青ざめていく。


間違いなく翔太君は恐らく電話で誰かにそう話していた。



「先に席をたったけど、食事代を渡すのを忘れてて直ぐに引き返したんだ」

『――――』

「その時にそう言ってた翔太君の言葉がずっと頭から離れないの」

『――記憶――――』

「全部、戻ってるよ」



記憶をなくしていた時の事も、なくす前の事もハッキリと覚えている。


なくてもいいと思っていたけど、やっぱりある方が安心できるなと思った。


自分がどんな人間だったのかもちゃんと思い出した。


記憶をなくしていた時の自分は、今思い返すと笑ってしまう程おしとやかで良い子だ。


そんな私を秋が愛してくれているなら私は良い子を演じ続けなければならない。


でも一緒にいられるならそんなの苦でもなんでもない。






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