愛を餌に罪は育つ
目を伏せてしまった翔太君の顔をジッと見つめた。


別に責めようと思ってこの話を持ち出した訳じゃない。



「今更どうこうしたい訳じゃないの。ただ、ちゃんと翔太君の口から聞きたい――朝陽の子供は存在しなかったんだって」



貴方を殺した男を殺しただけでは償いにはならないと思った。


私だけが幸せを掴んでしまった事に後ろめたさを感じているのかもしれない。



「自分の子だと認める必要なんてない。ただ否定して欲しいだけなの」

『――違う。朝陽の――子じゃ、ない』

「――ありがとう」



ねぇ、ちゃんと聞こえた?


貴方は自分と同じような子供をつくってはなかったんだよ。


貴方は確かに人を殺してしまったかもしれない。


だけど貴方も死んでしまった。


自ら命をたった訳ではないけど、それは命をもって償ったと言えるんじゃないかと思う。


そう考える私は残酷で歪んだ人間なのかな――。



『美咲ちゃん――』

「私たちだけの秘密だよ。子供の事も私の記憶の事も――」



翔太君は複雑そうな表情を浮かべながらも、了承するかの様にゆっくりと頷いた。






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