愛を餌に罪は育つ
秋はため息を吐きながら椅子に腰掛けた。



『お通夜に行ってたんだ』

「お通夜?誰のお通夜だったの?」

『美咲の前に俺の秘書を務めてくれていた水嶋さんのだよ』

「えっ――」



まさか前任の秘書だった女性だとは思わなかった。


何で――。



「病気を患ってたの?それで仕事を辞めたの?」

『いや、自殺だそうだ』

「自殺――?」

『崖から飛び降りたそうだ。遺体は見付かっていないが、遺書と目撃者の証言から彼女で間違いなだろうとの事だ』



秋の顔は凄く辛そうだった。


確かに一緒に仕事をしていた訳だし、悲しいっていう思いは少なからず抱いているだろう。


だけどどうして貴方がそこまで辛そうな顔をするの?



『俺のせいかもしれない』

「――どういう事?」

『彼女がインサイダー取り引きでお金を儲けていると、会長である父の仕事用のアドレスに送り主不明のメールが届いたんだ』

「送り主不明って事はただの悪戯かもしれないのに、もしかしてそれだけでクビにしたの!?」



秋が力なく首を横にふるものだから、思わず泣いてしまいそうだった。






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