愛を餌に罪は育つ
コートを羽織っていても一月の夜はやっぱり寒い。


今日は少し風が強くて、風が吹く度に頬に微かに痛みが走る。



『初仕事はどうだった?』

「ん~今日は副社長と挨拶をして一日研修だったから変な疲れが溜まってる。家に帰って気が抜けたからソファーで寝ちゃったのかも」

『きっとそうだろうね。副社長なんて偉い人と挨拶なんて緊張も凄かったんじゃない?』

「気分が悪くなるくらい緊張したよ。でも、副社長の秘書をする事になったから早く慣れなきゃ心がもたないよ」

『えっ!?副社長の秘書!?大丈夫なの!?』



目を見開いて驚く朝陽の顔を見て思わず苦笑いになってしまう。


誰でもそう思うよね、普通は。



「大丈夫じゃないけど、やれるだけやってみる。それでも無理そうだったら次の仕事探すしかないかなぁって思ってるよ」

『無理せずゆっくり確実に覚えていけばいいよ。焦るといいことはないからね』

「うん、ありがとう」



朝陽は笑って繋いでいた手に力を込めた。


付き合っているわけではないけれど、こうして手を繋ぐことは当たり前のようになっている。


私も嫌な気はしないし、振りほどく理由もないためそのことについては触れていない。


男性とは思えないほど繊細で綺麗な手が私は大好きだったんだろうな。






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