愛を餌に罪は育つ
男のくせによくも女の私の前でこんなに遠慮なく泣けるなと関心しつつ、いい加減鬱陶しさも感じてきていた。



「ここどこですか」

『病院だよッッ』

「病院?」



腕の力を緩め私から体を離した男の目には涙が溜まっていて、それは次々と頬を伝って零れ落ちた。


男の目は揺らぎ、何故か動揺しているようだった。



『覚えてないの?』

「何をですか?あなたは――誰ですか?」

『何言ってるの!?朝陽だよッッ!!』

「――あさひ、さん――――?」



朝陽さんは酷くショックを受けたような顔をして、直ぐにその顔を両手で覆ってしまった。


泣き止んだかと思ったらまた鼻をずるずるさせながら泣き出してしまった。


どうしてこんなに泣いているのか分からない私はどうすればいいのか分からなくて、だけど朝陽さんを見ているのも何故だか心苦しくて、目を逸らした。


この人はどうしてこんなにも泣いているんだろう――分からない――どうして――――。






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