愛を餌に罪は育つ
梓は残り少ないお酒を一気に飲み干し、次のお酒を注文した。



「美咲の前に副社長の秘書をしてた女の人は嫌がらせ受けてたよ。気にしてないって感じだったけどね」

「強い人だったんだね」

「よく言えばそうなんじゃない?悪く言えば図太いかな。彼女の場合嫌がらせを受けてる理由ははっきりしてて、誰の目から見ても副社長を狙ってるって直ぐに分かる感じだった。だから女性社員からはよく思われてなかったんだと思う」

「そうなんだ――――」

「そんなに不安そうな顔しないの!!美咲は大丈夫だよ!!」



私が大丈夫だなんて何の保証もない。


いつ嫌がらせが始まるか分かんないし、嫌がらせのきっかけになる事だって自分じゃ分からないような事なんだと思う。



「彼女は性格にも問題があった上に副社長まで狙ってたんだもん。副社長を狙ってる子達は嫌がらせの一つもしたくなるよ。それがいいことだとは言えないけどね」

「副社長は気付いてたの?その人が嫌がらせされてた事に」

「どうかな――彼女プライドが高かったから、副社長にそんな事知られたくなかったんじゃないかな。まぁ副社長は彼女のことを全く相手にしてなかったって事ははっきりしてるよ」



自分に好意を持っている女性を傍に置いていて、それを煩わしいとは思わなかったんだろうか。


嫌われているわけじゃないから特に気にしてなかったのかな?


あれだけ綺麗な顔をしているんだし、そういう女性には慣れているのかもしれない。



「彼女仕事はできる人みたいだったから副社長はそういうところを評価してたのかもしれない。それにスタイルも良くて顔立ちも綺麗だったから秘書として隣においておく分にはいい人材だよね」






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