愛を餌に罪は育つ
綺麗で仕事も出来たなら、隣に置いていても恥ずかしくないような人だっただろう。


それに副社長の前では猫を被っていたんだろうし、副社長にとっては最高の秘書だったんじゃないかと思う。


私なんかでいいんだろうか――副社長は何も言わないけど、本当は私の仕事ぶりに不満を抱えているかもしれない。


突然頬を摘まれ口をポカンと開けたまま梓を見ると、頬を膨らませ口を尖がらせたまま私の顔を見ていた。



「だぁかぁらぁぁぁ!!そんな顔しないのぉぉぉ!!」

「は、はひ」

「美咲は一生懸命頑張ってるじゃん!!副社長はちゃんと分かってくれてるよ!!試用期間も無事に終わって今社員として働いてるんだから問題ないって!!」



あまりにも梓が一生懸命喋るものだから、私はつい笑ってしまった。


私の頬から手を離すと、恥ずかしさを隠すようにお酒をグビグビと飲み始めた。



「ありがとう」

「どう、致しまして」

「真っ赤だよ、顔が」

「しょ、照明のせいだよ!!というかお酒のせいッッ!!私トイレッッ!!」



慌てて立ち上がると、そのままの勢いでトイレに急いで向かう梓の後ろ姿を笑いながら見送った。


梓の姿も見えなくなり、一人でお酒を飲み始めた時知らない男性に声をかけられた。



『あれ?美咲ちゃん?』



その人はしっかりしているようだけど、どこか軽い感じもして不思議な感じの男性だった。




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