愛を餌に罪は育つ
窓の外は風が強いのか雲の動きが早く、木の枝が揺れ葉が風に乗って飛んでいる。
他に見る場所がない為、なんの面白みもない外を眺めていると、突然頬に温かいものが触れ顔を向けると、朝陽さんが泣き腫らした目で私の事を見ていた。
『本当に――僕の事が分からないの?』
「――――ごめんなさい」
『僕は美咲の彼氏だよ』
「みさき?」
朝陽さんは目を見開き信じられないとでも言いたげな目を向けた。
私は眉を寄せ、首を傾げて朝陽さんの顔を見た。
『美咲は君の名前だよ』
「私の名前――」
『本当に自分の事も分からないの?』
愕然とする朝陽さんに遠慮がちに首を横に振ると彼は震える手でナースコールを押した。
マイクから聞こえてくる女性の声にしっかりとした声で朝陽はこう言った。
『大野美咲さんが目を覚ましました』
どうやら私の名字は大野と言うらしい。
状況がいまいち把握できていない私にとってはどんな情報でもとても貴重だった。
それがたかだか自分の名前だったとしても。
他に見る場所がない為、なんの面白みもない外を眺めていると、突然頬に温かいものが触れ顔を向けると、朝陽さんが泣き腫らした目で私の事を見ていた。
『本当に――僕の事が分からないの?』
「――――ごめんなさい」
『僕は美咲の彼氏だよ』
「みさき?」
朝陽さんは目を見開き信じられないとでも言いたげな目を向けた。
私は眉を寄せ、首を傾げて朝陽さんの顔を見た。
『美咲は君の名前だよ』
「私の名前――」
『本当に自分の事も分からないの?』
愕然とする朝陽さんに遠慮がちに首を横に振ると彼は震える手でナースコールを押した。
マイクから聞こえてくる女性の声にしっかりとした声で朝陽はこう言った。
『大野美咲さんが目を覚ましました』
どうやら私の名字は大野と言うらしい。
状況がいまいち把握できていない私にとってはどんな情報でもとても貴重だった。
それがたかだか自分の名前だったとしても。