愛を餌に罪は育つ
スプーンでオムライスを一口サイズに切りながら加藤さんが口を開いた。



『美咲ちゃんはいつみても可愛いね~』

「いえ――そんな事はないです」

『またまた謙遜しちゃって――』



オムライスを口に入れた加藤さんはそのまま動きを止め、固まってしまった。


その様子を見て今まで笑を我慢していた梓が噴出すように笑い始めた。



『人のこと笑ってるお前もオムライスじゃん!!』

「そうだけど、人がショックな顔してるのって面白い~」

『昼飯が唯一の楽しみなのによ』



そんなに美味しくないんだろうか。


見た目は美味しそうに見えるんだけど、二人の反応を見た後だと一口下さいとも言う気にはならなかった。



「美咲ちゃん~なんて馴れ馴れしく呼んだ罰だよ、罰」

『大野さんって呼ぶと距離があるみたいで嫌じゃん』

「距離があるんだって。相手との距離感に鈍感な営業マンは出世しないよ」

『うるせぇよ』



梓と加藤さんのいつものこのやり取りが好き。


場が和むというかなんというか、二人がどれだけ仲がいいのかが伝わってくる。







< 65 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop