愛を餌に罪は育つ
倒れて副社長のお世話になるなんて――なんて事をしてしまったんだろう。


副社長に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



「気分が悪いわけではないんです。サイレンの音に驚いてしまって――それで、その――気を失ってしまったんだと思います」

『そうか』



副社長は私の言葉を聞いて馬鹿にするような事はなく、静かにそう呟いた。


ちゃんと謝ってお礼を言わないと。


そう思い立ち上がろうとしたら軽い目眩に襲われ、倒れそうになった。


なんとかソファーの背もたれに手をかけ倒れずに済んだが、ホッとして気が抜けた瞬間手が滑ってしまった。


倒れても目の前にはソファーがあるため痛みはないだろうが、今からくる衝撃に備えるように私は目を瞑った。






< 70 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop