愛を餌に罪は育つ
『人それぞれ怖いと思うものは違う。だから今回の件を恥じる必要はない』



副社長の言葉に思わず顔を上げると、彼はとても優しい目をしていた。


こんな目もするんだ――。



「はい、ありがとうございます。それから、お忙しい中お手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした」

『気にしなくていい、大したことはしていない』

「そういう訳には参りません。本当に申し訳ありませんでした」



ソファーに肘をつき、頬杖をついた副社長は呆れたようにため息をついた。


副社長がなんと言おうと、謝る他ない私は少し気まずい気持ちになった。


今の雰囲気が落ち着かず、目を泳がせているとふと壁にかけてある時計が目に入った。


――――嘘でしょ?






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