愛を餌に罪は育つ
時計の針は夜の十一時を過ぎようとしていた。



「副社長ッッ本当に申し訳ありませんッッ!!」

『だから気にしていないと言っているだろう』

「お手間を掛けさせてしまった事もそうなんですが、こんなに遅い時間までお付き合いさせてしまって――」

『それも気にしなくていい。お陰で仕事が一つ片付いた』



副社長はまた謝ろうとした私の言葉を遮った。


また謝ろうもんならそろそろ怒られてしまいそうだ。



「本当に――ありがとうございました」

『どういたしまして。謝られるよりもお礼を言われる方がよっぽどいい』



こんな笑顔を見せられたらときめかない女性はいないんじゃないだろうかと思う。


いつもさほど表情が変わらない副社長のこの笑みは、とても魅力的だった。






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