愛を餌に罪は育つ
ブランケットを折り畳みソファーの上に置くと、私は今度こそ立ち上がった。



「電車がなくなってしまうので、そろそろ失礼致します」



頭を下げ帰る準備をする為秘書室の方へと足を進めた時、副社長から思わぬ事を言われた。



『送っていく』

「――え?」

『送っていくと言ったんだ』

「だ、大丈夫ですッッこれ以上ご迷惑をお掛けするわけには参りませんッッ」



私の言葉が聞こえていないかの様に、副社長は帰る準備を始めた。


その反応に挫けてしまいそうだったが、私は必死に訴えた。



「本当に大丈夫です!!お気持ちだけで結構ですからッッ」

『またいつ倒れるかも分からない女性を放って一人で帰れと?私は余程冷酷な人間だと思われているようだ』

「そ、そんな事はッッ――」

『では送らせてもらおう。その方が私自身安心できる』



副社長は私なんかより一枚も二枚も上手で、これ以上何も言えなくなってしまった私はおとなしく副社長に従うしかなかった。





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