愛を餌に罪は育つ
マンションの入り口に車を止めてもらい、私はシートベルトを外した。


長いようで短かった帰路は緊張したり恥ずかしかったりである意味慌ただしい時間だった。



「今日は本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。それから、色々とありがとうございました」

『明日は休んで一日ゆっくりするといい』

「お気持ちは有難いですけど、明日はちゃんと出社します」

『では無理はしないように』

「はい」



副社長に頭を下げ、車のドアを開け足を外に出しゆっくり地面につけた。


腰を浮かせた時突然大きな声で名前を呼ばれた。



『美咲ッッ!!』



顔を上げるとそこには息を切らした朝陽が立っていた。


朝陽は涙目で駆け寄ってくるとそのまま私を抱きしめた。


嫌なわけじゃない。


嫌なわけじゃないのに私は朝陽の体を押し退けてしまった。


その行動に自分でも驚いてしまい、ハッとして朝陽の顔を見ると凄く傷付いたような顔をしていた。





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