愛を餌に罪は育つ
「ごめんね」

『何がごめんなの?』

「混乱してたからか携帯の存在をすっかり忘れてた。本当ごめん」

『いいんだ。美咲が無事に帰ってきてくれたんだから』



朝陽は微笑み私の頭に軽く手を置いた。


なんだか前にもこうしてもらったことがある様な気がする。


だけどそれが朝陽だったのか別の人だったのかはよく分からない。


記憶もそうだけど、他にも何か忘れている様な気がする。


何だったかな――――あっ!


私は慌ててスプリングコートのポケットに手を突っ込み、以前見つけた指輪を朝陽に見せた。



「この指輪に見覚えは?」

『ちょっと見せて』



そう言うと朝陽は指輪を手に取りじっくりと見始めた。


拾ってくれた梓もこのくらい真剣に指輪を見てた気がする。



『これどこにあったの?』

「今着てるコートのポケットに入ってたの。指輪の内側に私たちの名前が彫ってあるから私か朝陽のだと思うんだけど」



私の言葉にバツの悪そうな顔をする朝陽。


なんで?






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