愛を餌に罪は育つ
朝陽は目を逸らし気まずそうに黙り込んでしまった。



「朝陽?」

『――怒らない?』

「どうして?」

『前はこの件で美咲に凄く怒られたから――』



この指輪でどうして私は怒ったんだろう。


いくら考えても私が怒る理由が分からない。



「前回の私はそうだったかもしれないけど、今の私は記憶もないしたぶん怒らないと思うよ?絶対怒らないとは言い切れないけどね」

『――――』



最後に少し意地悪を言うと、朝陽はまた黙り込んでしまった。



「もういいから早く教えてよ!!気になるじゃない」

『――お揃いで買ったのに、僕だけ無くしちゃったんだ』

「無くした?ショックだけどそんなにびくびくさせちゃう程私朝陽の事怒ったの?私って心狭い人間だったのかな――」



そんな風に思ってしまい、朝陽の事を怒るどころか自分自身にがっかりしてしまった。


だけど次の朝陽の言葉を聞いて、そう思ってしまった事を後悔した。



『買ってから一週間でなくしちゃったんだ――――』






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