愛を餌に罪は育つ
お昼はいつも梓と二人でとっていたけど、気付けば加藤さんたちも一緒にとるようになっていた。


加藤さんは営業だから、会社にいないことの方が多いけれど。


食事をしながら朝増田さんに言われたことを思い出していた。



「加藤さんって、お付き合いされてる方とかいらっしゃるんですか?」

『それ本気で聞いてるの!?』

「は、はい」

『こんなにアプローチしてるのに気付いてもらえてないなんて――ショック』



隣にいる梓はお腹を抱えてケラケラ笑っている。


加藤さんはわざとらしいほど悲しそうな顔をして、お味噌汁を啜っている。



「よく分からないんですけど――すみません」

『気にしないで、俺のやり方が悪かったんだ。今後改善するよ』



何を改善するんだろうか。


加藤さんってたまに変な事を言うんだよね。



『さっきの質問だけど、彼女はいないよ。好きな人は目の前にいるけどね』

「目の前って――」



後ろを振り返ってもそこには男性社員の後姿しかなくて、私の事を言っているんだと思った。


そう思った瞬間段々と恥ずかしくなって、何も言えず固まってしまった。







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