愛を餌に罪は育つ
私の様子を見て梓は相変わらずケラケラ笑っている。



「加藤君にしては思い切ったね」

『だってこのままじゃずっと気付いてもらえなさそうじゃん』

「美咲は鈍いからね」



鈍いもなにも会うたびに可愛いねだとか、今度二人でご飯行こうよとか言われてたら社交辞令なのかと思っちゃうよ。


でも好きなんて言葉社交辞令じゃ言わないよね――。



『ごめんね、困らせるつもりは無かったんだ。今すぐ返事がほしいわけじゃないから、俺の気持ちだけ知っておいてもらえる?』

「は、はいっ」

『やっぱり美咲ちゃんは可愛い』



いつも言われていた言葉だけど、今は状況が状況なだけに益々私の頬は熱を帯びていった。


ずっと隣で笑っていた梓の笑い声が突然止み、慌てた様子で肩を叩かれた。



「どうしたの?」

『入り口に立ってるのって副社長じゃない!?』



そう言われ入り口に顔を向けるとそこには間違いなく副社長が立っていた。


誰かを探しているのか食堂を見渡している。


その様子を女性社員はうっとりした様な表情を浮かべ、食事をする手を止め見詰めていた。


自分がどれだけ目立っているのか気付いていないんだろうか。








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