愛を餌に罪は育つ
「副社長の女性の好みとか、趣味とか教えて欲しいの」

「えっと――プライベートな事は私も何も知らないんです」

「あれだけ一緒にいるのに?どんな些細な事でもいいの、教えてくれない?」



手を合わせて上目使いでお願いしてくる彼女たちに何か教えてあげたいけど、いくら考えても副社長のプライベートの事は何一つ分からなかった。


こんなに必死に誰かの事を知りたいと思える彼女たちが少し羨ましかった。



「たぶんですけど――」

「うんっっ」

「たぶん副社長は甘いものが苦手だと思います」

「そうなの!?やだぁ!!バレンタインデーに甘いチョコレートあげちゃったぁ!!」



みんなバレンタインにチョコレートをあげたのか、がっくりと肩を落としてショックを受けているようだ。


こんなに沢山の人からチョコレート貰ったんだ――。


そのチョコレートの山はきっと誰かにあげたんだろうな。



「他には何かないの!?」

「他には――すみません、私もまだ秘書になって日が浅いのでちょっと分からないです」

「それもそうよね――また何か分かったら教えてくれる?私経理部の大塚って言うの。それじゃまたねっ」



彼女たちは満足そうな笑みを見せてあっという間に席を移動してしまった。


台風みたいな人たち。






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