愛を餌に罪は育つ
ビールで吹き飛んだはずの疲れが戻ってきたような感じ。


サラダを食べていると、佐々木さんの笑い声が聞こえてきた。



「大野さんの怯えた顔思い出しちゃって、ごめんね」

「そんな顔してました!?」

「してたよ。隣で梓も笑いながらお酒飲んでたしね」



梓の顔を見るとまだ笑いが収まらない様子でお酒を飲んでいた。



「本当にビックリしたんだからね」

「ごめんね、なんだか割り込むタイミング逃しちゃってさ。でも副社長が甘いもの苦手なんてよく咄嗟に思いついたね。嘘でしょ?」

「嘘じゃないよ、本当に苦手だと思う。お客さんとかからお菓子を貰っても食べずにくれるの。だから三時のおやつにして秘書課のみんなで頂いてるんだ」

「本当の話だったんだ。それなら副社長にとってバレンタインデーは最悪な日だね」



甘いもの苦手でも断らずに貰っちゃうところが副社長らしいなって思う。


雰囲気とか見た感じ怖い印象を受けるけど、優しい人。



「副社長の秘書してたら太っちゃいそうだね」

「――そうかも」



私の言葉に佐々木さんと梓は可笑しそうに声を出して笑い始めた。


気付けば佐々木さんのお酒は生ビールから芋焼酎に変わっていて、性格だけじゃなくてお酒まで男らしい人だと思った。







< 97 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop