10年越しの恋
「本日はご搭乗頂きありがとうございます。当機はまもなく離陸いたします。シートベルトを…」

CAのアナウンスが響く機内で窓の外を眺めていた。
飛行機が死ぬほど苦手。

離着陸の時間帯に多い事故。そんな話を思い出し余計に怖くなる。
真下に響くエンジン音が恐怖を煽る。
そんな音を遮断する為、持ち込んだMDウォークマンの音量を上げた。

それでも体に感じる加速するエンジンとGに目を閉じる。

雅紀からもらった手紙を握りしめ、
「今日も無事に飛び立てますように」そう祈った。

数分後、シートベルト着用解除を示す音にやっと落ち着いて改めて周りを見渡すと、同じプログラムの参加者が一角に集められているようだった。

友達同士2人組での参加が多いみたい。
楽しそうにはしゃいでいるのが見える。

配られる飲み物から無難にアイスティーを選び、雅紀から渡された封筒を開いた。

To.瀬名 

今は瀬名が出発する日の前日。さっき電話を切ったところです。改めて手紙なんて少し不思議だよね。でも、メールや電話じゃなくこんなのもいいかなって。

瀬名と出会ってもう3年。長くて短いかな?
ずっと一緒にいたから、今回こうやって少しの間なのに離れるのが変な感じがする。
出会った卓球大会の日。瀬名に彼がいるって他の奴に聞いて知ってたけど、なんか一目ぼれみたいなで…。
その結果辛い思いさせちゃってごめん。

上手く書けないけど、改めて少しの間離れるって思っただけでも少し寂しいし、やっぱり俺は瀬名が好きなんだなって、そう思った。

だからたまにはこうやって離れることで気持ちが確認できるっていうか…。

とりあえず頑張ってきて! 浮気なんてしないって誓えるし。汚い字で読みにくかったらごめんね。

From 雅紀

短い文章の中に雅紀の思いを感じる。
封筒に手紙を戻そうとするともう1枚の固い感触。

初めて二人でデートしたあの日の写真だった。

ぎこちない二人の間にピンクのポスカで書かれた文字。

『寂しくなったらこれ見て頑張れ』

雅紀の優しさに気持ちが暖かくなった。

(ありがと、がんばってくるよ)

手紙と写真を封筒に入れなおし、握りしめたまま眠りについた。
< 100 / 327 >

この作品をシェア

pagetop