10年越しの恋
目を覚ますと、照明が落とされた機内では見覚えのある映画が上映されていた。

そういえばこの映画。雅紀と観に行ったなぁ、なんて思いだす。

付き合ってから夜、声を聞かないで寝るのは初めてだ…。まだ到着する前から少し寂しくなった。

狭い座席の中で何度も体の向きを変えながら浅い眠りを続けた。

朝の機内食が終われば、あと1時間程で到着。
サンシェードを開くと真っ青な空が広がっている。
雲一つないって当り前か。雲の上を飛んでるんだもんね。

洗面を済まし、座席に戻ってまた恐怖の着陸に備えた。もう窓の下には小さくアメリカの町が見えている。

【ドスン】

けっこうな衝撃を受けながら無事到着した。

夏休み中ということもあって大行列の入国審査と通関を済ませ荷物が流れてくるレーンへと向かった。
同じようなケースが無造作に並んでいる。
次々と目の前を通り過ぎて行く中、自分の荷物を見つけた。

流れ続けるケースを持ち上げようとすると、重さのあまりびくともせずに流され続けていく。
すると横から誰かがひょいと降ろしてくれた。

「ありがとうございます!」

「機内隣の席。同じプログラムに参加の人ですよね?」

(うぅん?そうだったの?覚えてない……。ここは笑ってごまかそう!)

「はい」

「集合場所あっちみたいですよ」

現地のコーディネータが人数確認を終え、バスへと乗り込んだ。

元々の友達、飛行機の中で仲良くなった感じの人同士が次々と席を決め座って行く中、私は1番後ろに空いた席に腰をおろした。
高いビルに囲まれた隙間から垣間見えるL.Aの青く澄み渡った空を見上げていると、急にその光が妨げられる。
振り向くとさっきの人。

「隣いいですか?」

「はあ……。どうぞ」

置いていた荷物を除ける。

背の高い男の子。短い髪を長時間のフライトの後だとは思えないほどきれいにセットしている。

バスが滞在先の街へと向かい走りだした。

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