10年越しの恋
=小児病棟=

ここで出会った一人の大きな目が愛くるしい少女、未来ちゃん。日本人のお母さんとアメリカ人のお父さんのハーフ。幼少期に発症することが多い肉芽腫だった。

小さな頭に被ったニット帽は抗がん剤と放射線による副作用で抜けた髪を隠すためだ。
3歳で発症。一度は改善がみられたものの再発を繰り返し末期での入院。5歳。

小さな子どもが話す英語に苦労していた私を助けてくれた。

早口で、発音もあいまいな子供たちの言葉に首を傾げているといつも立派な通訳さんをしてくれた。
日本のご飯食べたいでしょ? そういってお母さんが作ったおにぎりを分けてくれた。


最終週は一様に観光の予定が組まれている。

あと5日か…。そう思いながら今日も病棟へと向う。

病気とは思えない勢いで廊下を走りまわる子供たち。

その一番奥の個室が騒がしいことに気がついた。
付き添いの親たちが囁く声が聞こえてきた。

(未来ちゃん!!!)
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