10年越しの恋
初夏 暖かくて快晴、空がきれいな日だった。

『A公園なんて小学生の遠足以来だよ~』

なんて考えながら電車で待ち合わせ場所へ向かった。

窓から見える景色が都会からきれいな田園風景へ。

なんだか生まれて初めてのデート? っていうぐらいドキドキしたのを覚えてる。

駅に着くと、もう先に雅紀は改札で待ってくれてた。
ベージュのニットジャケットにジーパン。


「ちょっと大人な感じにしてみた」ってはにかむ彼。


すっごい照れくさかった。

駅から公園までのバスの中。

妙にぎこちなくてお互いに緊張しているのがよくわかった。

雅紀も年上なんかとデートするのは初めてだろうし。

でも、一生懸命私をリードしようとしてくれてるのがうれしかったんだ。


「ホントに鹿が普通に歩いてるんだね」


「住んでる人には当たり前のことだから。でも言われてみたら不思議な光景かも」


「そうだよ~ だってなんか怖いもん」
そんなたわいのない会話をしながら歩いてたら、


急に「手つなご」って。

あまりに純粋できれいな笑顔に、気付いたら手をつないで散歩してた。


「ねぇ、お腹すいてこない?」


「そうだね~ ちょっとすいてきたかも」


「美味しいお蕎麦やさんがあるんだけど?」


「お蕎麦大好き」


「ほんとに?よかった~ ちょっと渋いかな~って」


「たしかにね。でもいいじゃん、連れてって」
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