10年越しの恋
二人で過ごす3度目のX'masがやって来る。


=12月23日=

いつもの夜の電話、めずらしく少しテンションの高い声で話し始める。


「明日は昼の11時に迎えに行くから、軽く1泊旅行ぐらいの準備しておいて」


「1泊? どこ連れて行ってくれるの?」


「内緒だよ! コンタクトケースとメイク落としさえあればいいってこと」


「どこ行くの? 教えてよー」


「だから秘密だって! じゃあね、おやすみ。愛してるよ」



そう言って突然電話は切られてしまった。



=12月24日 朝=


今年の誕生日は偶然にも全員が不在だった雅紀の家で初めて手作りの料理で祝った。

アメリカから買ってきたニットをプレゼントしたんだっけ。

そんなことを思い出しながら昨日の夜、雅紀に言われたように少し大きなカバンに荷物を詰める。
小さな化粧ポーチを入れた最後に、もう一つ雅紀へのプレゼントを忍ばせた。


シャワーとメイクを済ませリビングでTVを観ているとチャイムが鳴る。


「瀬名、雅紀君来たみたいよ」

「はあーい、そうだ今日は帰らないと思うよ」

「あらそう、楽しいお誕生日を過ごしてね」


娘が彼と外泊だと宣言しているのにさっぱりした母の態度。まあいつものことなのだけど、あまりの無関心な様子に少し寂しさを覚える。

「じゃあね。行ってきます」


通りに雅紀の車を見つけ、足早に駆け寄った。


「お待たせ!」

車に近づくと煙草を吸っていた雅紀が荷物を手に取り、助手席のドアを開けてくれる。


「今年の誕生日はスペシャルだよ」

「なに?なになになに? どこ行くの?」

「だから内緒だって!」


車は西へと向かった。


この時期どのchも同じようなクリスマスソングが流れるFM。


「この曲を聞くと瀬名の誕生日だなって思うんだ」


ラストクリスマスだ。


「耳にしない年はないよね!」


「一生忘れられそうにないよ」




今もこの曲を聞く度に思い出す。
最高に楽しかったあの日を。
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