10年越しの恋
部屋には戻らず少し散歩することにした。

何もない島で唯一、たくさんのイルミネーションに輝くホテルに隣接する公園。

対岸に光る街の光が華を添える。

「まあちゃん、嬉しすぎてありがとう以外の言葉が見つからない」

3度目のクリスマスも変わらず私の隣、つながれる雅紀の左手を強く握った。

「瀬名のうれしそうな顔が俺にとっての幸せだから」

そんなくさいセリフを何気なく口にする。

「なんか照れるんですけど?」

素直になれずそんなことばかりを言った。

私とは正反対、素直に自分の気持ちを言葉にする雅紀のそんな性格を羨ましく思う。

良い育てられ方をしたんだろうなって。
ずっとそんな風に感じていた。

「瀬名は俺のこと好き?」

唐突な質問に一瞬理解できなかった。

「どうしたの?」

隣に立つ雅紀の顔を見上げた。

「時々不安になるんだ。なんとなくこんな俺でいいのかって」

「なに言ってるの? 当たり前でしょ」

「本当に?」

「今日だってこんな素敵なお祝いしてくれるし、いつもちゃんと車で迎えにきてくれるし、年下なのに私の方が甘えてるし…」

必死で伝えようと意味不明な説明を続ける私に表情を緩める。


初めてこんな雅紀を目にして男女関係なく、誰もが同じような不安を抱えているんだなって思った。

だからいつもきちんと自分の気持ちを伝えてくれていたんだとわかった気がした。


勇気を出して、今まで1度も口にしなかった言葉を。

小さな声で、でもたくさんの思いを込めて伝える。

「愛してるよ」と。
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