10年越しの恋
中途半端な時間の店内は人もまばらで、すぐに部屋へと通される。

「3人でカラオケとかってさ、すっごい久し振りじゃない?」

入ったとたん曲を入れ始めるさや。

「うん! 1年生の頃はさやがバイトしてた店に毎日通ってたよね」

「まさよは最初恥ずかしがって歌わなかったよね」

懐かしい話を続けていると曲が始まる。


「これ― さやのが幸せな時に歌う歌!!」

『もしかして!、新しい彼出来たりする?』

まさよと二人音楽に負けないほど大きな声で聞くと、

「できたよ!! 心配かけてごめんね」

マイクを通しそう宣言すると歌い始めた。

音楽はにおいと同じように人の記憶を過去へと導く。

彼が付けていた香水。
同じ香りが鼻をかすめるとその人の顔や思い出が浮かぶように、音楽はよりピンポイントに、その曲を聴いていたシーンをリアルに思い起こさせる不思議な力を持っていると思う。


私たちも3時間近く歌いつづける間、たくさんの思い出話をした。


4年間の数えきれない3人それぞれの気持ちがある。

思い出になったこと、今でも胸に秘めていること。

それぞれが経験した恋、失恋。

きっと一生の思い出。

あと1ヶ月を大切に、思いっきり楽しもうと思った。
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