10年越しの恋
卒業の喜び、別れの寂しさ。

みんなの気持ちがあふれる石畳を、挨拶を交わし正門へと向かう。

ついさっき告げられたケンの気持ちを抱えながら…。

少し複雑な思いで正門を目指した。


「瀬名!」

いつもと変わらない雅紀の笑顔が目に入る。

なんだか上手く目が見れない。

そんな私の様子に、さやとまさよが雅紀の背中を強引に押し出した。

困った表情のまま「卒業おめでとう」と

かわいい1輪のチューリップの花を差しだしてくれる。

すでにさやとまさよが手にしているのと同じもの。

気を利かせ全員に買ってきてくれたんだろう。

ケンにもらったブーケを隠すように受け取った。


「ありがとう! 無事卒業出来たよ」

「じゃあ、行きますか?」

「待って、あのね… さっき」



「気づいてなかったの瀬名だけだから」

「????」はっとして目を上げると、

少し離れた場所で二人がにっこり、手に持った花を振っていた。

「ケンさんも気の毒だよなー」

「なんで??? いったい何なの?」

「まあいいから! さあ、行くよ」



最後まで個人主義な大学には謝恩会なるものは用意されておらず、なぜか3段のお重に入ったおせちのような料理と記念品のボールペンが支給されただけだった。



だから大学最後の贅沢!って。

お祝いをするために予約しておいたホテルへ雅紀の車で向かった。
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