10年越しの恋
飛び立ってから2時間、眼下には同じ日本とは思えない青い海に点在する小さな島が見える。

高度を落とし始めた時に感じる耳の痛さと恐怖に、ブランケットを頭から被り無事着陸した。


着いてしまえばげんきんなもので、早速機内でビーチサンダルに履きかえ出口を目指す。


外へ出るとこれぞ沖縄!という青空が広がっていた。

上に羽織っていたコットンセーターを脱ぎ太陽の光を浴びながら伸びをする私を見て、


「さっきまでの瀬名はどこに行ったの? Tシャツの下、水着着てるし」

あきれる雅紀の手を引っ張ってタクシーへと乗り込んだ。


初日の目的地 ”小浜島”へ

船着き場と向かう道は、程よく田舎で、程よく都会だった。


「ありがとうございます」

タクシーを降りると島唄の音色と強くなった潮の香りを感じた。


船の時間を確認するとまだ時間に余裕がある。



「日本一美しいビーチに行こう!」

時間があれば絶対! と密かに計画していた、

石垣島からは船で10分の竹富島。


自転車を借りてビーチへと向かう道は真っ白な砂で覆われ、海水も想像以上に透き通っていた。

真夏を思わせる日差しを浴びながらその海に足を入れると、都会で身につけたたくさんの不要なものが体から抜け落ちていくのを感じた。

さんざん海を満喫した私たちは島名物のそばでお腹を満たし、再び石垣へと戻った。


「楽しかったね!」


島から戻っても上半身ビキニ姿のままの私に白いラルフのシャツを掛けてくれる雅紀。


「日焼けするから」


少し怒った表情の雅紀。


「どうしたの?」


「そんな肌露出……」




雅紀の少し大きなシャツに腕を通した。

いつもの匂いがする。

こんなさりげない優しさが大好きだった。
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