10年越しの恋
石垣から小浜島へは25分程。

少し小ぶりの高速艇は島への食糧や買い物へ出かける島民の輸送手段として利用されているようだ。

私たちは船室の後ろにある小さなデッキに陣取った。

思っていたよりも早い速度と少し海面から跳ね上げらる水しぶきを浴び、夕暮れへと少しずつ傾き始める南国の太陽と海のコントラストのまぶしさに目を細めた。

フェリーの発着場所には各ホテルの送迎バスが待機している。

バスに乗り込み進む道はサトウキビ畑以外何もない。


数分でバリ島を彷彿させる建物が見えてきた。


島で一番人気のホテル、この旅行で唯一私がこだわった場所。

HPで見たままの部屋は西側の窓一面に海が広がる。


「やばくない! すごいよね!」


到着後すぐベランダではしゃぎ続けた。


私の荷物をクローゼットへ入れ終わった雅紀がそっと後ろから抱きしめる。


「なんかいいね、この感じ」

いつもとは違う海の匂いがした。


「うん、最高に幸せかも」




目の前の雅紀の顔はほんのり日に焼けて赤い。

そっと重なる唇。

南国の日差しのせいかな? 

照れずに自分からもう一度軽くキスした。


少しずつ沈む夕日。




「ねえ、せっかくだから散歩しない?」


普段とは違う自分の行動に戸惑いながらも雅紀の手を取って外に出た。

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