10年越しの恋
プライベートビーチへはここはジャングル?

そんな風に思うような雑木林が生い茂る小道を進む。

本土と違いマングローブのような幹が曲がりくねった木の間からブーゲンビリアが明るい花びらをのぞかせる。

5分程歩くと目の前にサンゴ礁がむき出しになった潮の引いた海が広がった。

誰もいない、180度広がるその景色に息を飲む。

ちょうど目線と同じ高さに高度を下げた太陽が真っ白なサンゴをオレンジ色に染めている。

大学の授業で聞いた地球の起源を思い出した。

水のない海をまっすぐに歩いていく雅紀を追う。

慌てて追いつきその手を握った。


「ねぇ、命の始まりって何時だと思う?」


「うん? 何、突然」


「いいから答えて」

少し困ったような表情を見せた雅紀。


「そうだな… その生まれてくる子供のお父さんとお母さんが本当に愛し合った時から、かな」

普段都会で聞くと恥ずかしいような答えもここではしっくりと心に収まる。


「なんとか言えよ」

自分の言葉に照れる横顔を見ながらその通りだなって思ったから……。


【私たちにもそんな命を授かる日が来るのかな】


言葉にはしないで、つないだ手を強く握り返す。



「夕日きれいだね」


見当違いな答えにも黙ったまま二人で沈んでいく太陽を見送った。
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