10年越しの恋
浩一との別れを決意したもののなかなか切り出せずにいたんだ。

「もうすぐ連休だろ? お前大学生で暇なんだしこっちに遊びに来ない? 車で九州一周旅行しよ」

「でもね、ほらバイトが休みとかは模試なんかがあって入らないといけないかも知れないんだ」

「そんなの休んじゃえよ、どうせバイトなんだし。離れてる上に俺は社会人で連休ぐらいしかあえないんだからさ」

「うん…」

自分勝手な浩一の態度に腹が立つ。
いつも自分の都合だ。
バイトだって給料をもらってる以上立派な仕事であることに変わりはないのに。

そんな浩一の態度に何度も嫌な思いをした。
それでも最初はほんとに遠距離でも続けるつもりだった。なぜかそうしなければいけないと思っていた。

浩一は強気に振舞う反面コンプレックスの固まり。

幼い頃のいじめ。原因は国籍の問題だったと聞いた。
未だに残る在日韓国朝鮮人差別。
そのせいで人を信じられないと浮気を繰り返した。

ほら、この免許書の本籍。なんかわかんない住所だろ? 俺1度も行ったことないし、韓国語も話せない。2人の上の姉ちゃんたちが結婚する時、相手に日本国籍をとってもらわないとって…。俺もいままであなたとは結婚は出来ないとか言われていろいろ大変だったんだ」

以前そんな風に苦しそうに私に打ち明けてくれた。

そんな浩一を裏切れない、そんな考えにとらわれていたのかもしれない。
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