10年越しの恋
「瀬名、着いたよ」
いつの間にか寝てしまっていた。
「ごめん…、寝ちゃってた」
「気にしないで。 降りられる?」
雅紀の手を取り外に出た。
「まあちゃん、ここ…」
そのまま手をつなぎ、防風林に囲まれた砂利道を進んだ。
付き合って1年目の記念日、二人で朝日を眺めた海岸。
夜が明け始めた海にはもう数人のサーファーが波待ちする姿が小さく見える。
あの時よりも優しく防波堤へと導いてくれた。
「瀬名がここ大好きだって言ってたから」
「ここで朝日を見ながら食べる朝ごはんは最高」
隣でコンビニのおにぎりを開く雅紀の手から奪いとってほおばる。
「おいしいね」
久しぶりに気持ち悪くならずに食べることが出来た。
ほんの少しだけ不安から解放される気がする。
お茶に手を伸ばそうとした瞬間抱きしめられた。
「瀬名、絶対に守るから。俺を信じて」
雅紀の不安が伝わって、腕の中でそっと頷くことしかできない。
そのまま重ねた唇。何度も何度もやさしくおでこに頬にキスをしてくれる。
「華ちゃんが見てるよ」
そんな私の言葉に笑い合った。