10年越しの恋
雅紀と私の向かい側に父親、そしてその隣にお茶を運び終えた母親が座った。


「さえ遅いわね…、何してるのかしら」


「あいつ関係ないし先に始めよう」


「関係あるでしょ、あなたのお姉さんなんだから」


そんな二人の様子に緊張が増し、吐き気を我慢しているとその場にはそぐわない足音でさえちゃんが降りて来た。

何にいらついているのかを聞きたくなるほど不機嫌な表情で、テーブルにではなくTVの前のソファーに座った。


「さえ、こっちに座りなさい」

そんな父親の言葉も無視。


「早く話し合い始めたら」

綺麗に巻いた髪の毛を触りながら言った。

そんな様子に苛立つ雅紀はぶっきらぼうに話しを始める。


「もう今更話すことなんかないんだけど、とりあえず二人で了承をもらいにきた」


「改めましてこの度はご心配をお掛けして申し訳ありません」


私が頭を下げるとお父さんは「瀬名さんが謝ることではないでしょ」と険悪な空気を変えるように言ってくれた。


< 171 / 327 >

この作品をシェア

pagetop