10年越しの恋
私はあまりの展開に気分が悪くなり、了承を得て洗面所へと向かった。

離れたこの場所にまで雅紀のどなる声が聞こえる。

涙目になりながら、華ちゃんに話しかけた。


「心配しないでいいよ。パパが守ってくれるからね」


そっと扉を開くと雅紀が待っていてくれた。


「瀬名…、ごめん。もういいから部屋で休もう」


「でも……」

いいからという雅紀に背中を押され2階へ向かった。


「瀬名、本当にごめん。こんな状況つらかったよな」


部屋に入るなりおもいっきり頭を下げる。


「謝らないで、年上の私が責めらるのは仕方ないことだと思ってるから」


言葉とは裏腹にへたり込むようにベットに座った。

それ以上はお互いに言葉が続かず黙ったまま。

スイッチが入れられたTVから不自然な笑い声が聞こえるだけ。


隣に座ると大きな手を重ねてくれた。


「絶対に瀬名と華ちゃんの笑顔を守る」と。



しばらくすると静かな寝息が聞こえてくる。

何日寝ないで頑張ってくれていたんだろう。

切なさに胸が締め付けられそうに痛んだ。


「ごめんね、まあちゃん」


さらさらと額にかかる髪を撫でた。


内線の着信を示すランプが点滅しているのに気付かないまま……。

今まで二人で行ったたくさんの場所で撮った写真を眺めていた。

〈コンコン〉

ノックの音にそっとドアを開くと雅紀のお母さんが立っていた。

「何度も内線鳴らしたんだけど… 雅紀は?」


「少し疲れたみたいで眠っています」


体を少しずらすようにしてその姿を見せる。


「そう、ちょうどよかったわ。少しいいかしら」


「……はい」


隣にあるさえちゃんの部屋へ通された。

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