10年越しの恋
中学の頃、荒れていた地元の中学には行きたくなくて私立の中学を目指した。

ただ6年生になってからの進路変更だった為にあまり優秀とは言えないお金持ちの子女が集まる学校へと進学先が決まった。

入学してみると今までの環境とは全く違う世界が待っていた。

中学生なのにありえない額のおこずかいをもらい、流行りの物をすべて手にする同級生に全くついて行けなかった。

そんな私は予想に漏れずいじめの標的となり、ありがちに教科書を隠されたり、筆箱の中身を焼却炉にばら撒かれたり。

そんなストレスと反抗期が重なり次第に勉強をしなくなって、1年が過ぎた頃仲良くなった友達と髪を染めたり校則違反を繰り返した。

でもこの学校は私の住む地域では校則が厳しいことで有名。

少しスカートを短くしただけでも大騒ぎで、金髪にして登校した子はそのまま職員室で黒染めの刑を何度も受けていた。

そんな頃の私を知る同級生の弟、その彼女がさえちゃんだった。



「だからそんな人と雅紀が結婚されると私が困るの」


「困る?」


「そう、私は玉の輿に乗るために努力してきたし。
今の彼と結婚が決まりそうだからあなたみたいな人が家族だと恥ずかしいんだ」


確かに彼の家なら玉の輿だよね…。混乱する思考の中思った。


「でもそこまで否定されるほどのことはしていませんし、どうしてそんなことを言われないといけないのかが理解できません」


「じゃあ教えてあげる。あなたの親がろくに学校も出ていないから。そんな人と親戚になりたくないし、私の結婚の障害になる」


「ある程度の家同士の結婚となると家族全員の身辺調査されたり大変なのよ。だから雅紀にも絶対に大学を卒業してもらわないと困るの」


繰り返される二人の話はもう私の耳には入ってこなかった。

耳障りなTVから聞こえるどこかの政治家の演説を聞いてるみたいだった。

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