10年越しの恋
ちょうど自宅近くの駅に到着したと同時にメールが届いた。


”19時に駅前でいい? 夕飯食べながら話ししよ”


あと1時間ぐらい時間があった。家に帰る気にはならない。


”駅前のドーナツ屋さんで待ってます”


そう返信し店へと向かうと、混み合う店内に漂うたくさんの匂いに吐き気を感じて慌てて外へ出た。

こんなに大変な状態でも華ちゃんが元気な証拠。

そっとお腹に手を当てる。

ゆうが来るまでお散歩でもしよっか。

その存在を確認するように華ちゃんに話しかけ歩き始めた。


待ち合わせ時刻に元の場所へ戻ると、もうゆうが店の前で待ったいた。


「どうしたの? てっきりお茶でもしてるのかと思ったのに」


「ちょっと散歩」


「変な瀬名。まあいいや、ご飯どうする?」


「どこでもいいよ、ゆうの好きなお店で」


「じゃあパスタでどう?」



駅から少し離れた店へ入った。

めずらしくお酒ではなくオレンジジュースを注文した私に怪訝な表情のゆう。


「それで話って何よ」


「それがね……」


「うん」


「…子供が出来たんだ」


「え!!! ほんとに? それでどうするつもりなの?」


話し合って産もうと決めたこと。

雅紀の両親に話をしに行ったこと。

そして今日話し合いの後に言われたことを一気に話した。


「なんか昼のドラマみたいでしょ」


重くなりそうな空気を変えようと明るく言ってみる。

でもゆうは表情を崩さなかった。


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