10年越しの恋
夕方雅紀が迎えに来てくれた。

その頃にはもう激しい痛みは消え、それとは引き換えに全く感じなくなってしまった下腹部の重みと吐き気に華ちゃんが本当にこの世を去ったことを実感した。


「瀬名」


部屋に入ってきた雅紀はそっとベットサイドの椅子に座って優しく髪を撫ででくれた。


「もう帰ってもいいの?」


「先生に確認したから大丈夫だよ」


立ち上がろうとする私に優しく手を貸してくれる。


「朝から何にも飲んでないし喉渇いたんじゃない?」


「うん」


「車に瀬名の好きなアイスティー買ってあるよ」


まだ少し痛む下腹部をかばうように歩いた。


術後1日は絶対に安静が言い渡されていたので親には告げずに手術を受けた私は家に帰ることが出来ず、近くのビジネスホテルで過ごすことにした。

「瀬名、何か食べる?」

部屋に入るとすぐに感じた空腹感が華ちゃんの不在を私に思い知らせているようで、何も食べる気にはならなかった。


「今はいいや」


そう答えるとベットにもぐりこんだ。


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