10年越しの恋
家に帰ると寂しそうにモモがしっぽを振って待ってくれていた。


「モモ、お父さんとお母さんは」


そう声を掛けながら抱き上げるとテーブルの上に置き手紙があった。


”お友達とみんなで夕食出かけます”


仲のいい両親は月に何度もこうして友達夫婦と食事に出掛けていない。


またか、そう思いながら自分の部屋へと向かった。

モモを離すとベットの上ですぐに暴れ始める。

大好きなぬいぐるみ相手に喧嘩を売る姿が可愛い。

そんな騒がしい声を聞きながら頭に浮かぶこと。

それはどうやって伝えよう… そのことだけだった。


こんな風にいくつになっても二人で仲良く出かける両親は理想の夫婦像。でも反面いつも一人ぼっちで寂しかったのも事実で、だからこれまで何の相談も出来ないできた。

いままではそれなりに自分の判断で上手くいってたし、努力でなんとかなってきたように思う。

でも今回初めて知ったこと、それは一人ではどうしようもないことがあって親の存在を無視することは出来ないという事実だった。

華ちゃんがこの世を去ってから日を追うごとに自分の中の悲しみが行き場のない怒りに変化していることに気がついて、一層苦しみを増す。

今の状態で気持ちを話すと何を言いだすか分からない自分が怖い。

孤独に気づいてしまったから。


雅紀の優しさが思いやってくれる気持ちが唯一の救いで支えだった。

ゆう以外誰にも話せずにいたから。

もしかしたら軽蔑されるかもしれない、友達でいられなくなるかもしれない。

誰にも知られたくなかったんだ。

小さな命を守りぬけず殺めてしまったことを。

もう遠い昔のことなのにいじめられた記憶がこんなにも長い間人の心を苦しめることを誰が知っているんだろう。

こんなにも心を弱くしてしまうことをいじめた相手は知っているのだろうか?

そんな結論のでない所にまで一人頭の中で考え続けた。
< 201 / 327 >

この作品をシェア

pagetop