10年越しの恋
「久しぶりの再会を祝って、乾杯!」


生ハムやラタトゥーユ、ブルスケッタをつまみながらグラスを空けた。


「もうマジむかつくんだって!」


ワインがいい感じに回りはじめた頃から東京生活の愚痴が止まらなくなり始めた。そんな会話も仲のいい友達同士だからと楽しく思える。

まったく違う環境で生活しているのにこの変わらない感じがたまらなくうれしかったんだ。


「さやなら絶対に大丈夫! 瀬名が保障するから」


「そうかな? 信じていい?」


「大丈夫だよ。だってさやだから」


傍から聞いていると十分な酔っぱらいの会話だけど、私たちはまだまだこれから! ともう1本ワインを追加オーダーした。


「さやはトイレに行ってきます」


オーダーした直後、店のエントランス付近にある洗面所へと席を立った。


さやがドアを開いて中へと姿を消すと同時に入口が開いた。


「5人なんですけどいいですか?」


甘ったるい独特の声と強い香水の匂いに目をやると、まさに男の視線のみを意識した装いの女の子が入ってきた。
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