10年越しの恋
こんなに酔っているのに妙に冴える思考が瀬名の悲しみを私に実感させた。

なのに未だ楽しそうな馬鹿女の声が怒りを増長させる。

もう我慢の限界だった。

立ち上がってヒールを鳴らしながら近づくともう自分でも止めることが出来ないほど感情が溢れだすのを感じた。


「ちょっとそこのブス、今いいかな?」


「ここにはブスなんていませんが?」


薄笑いを浮かべる一番メインらしい女の声を無視してウエーターからちょうど運ばれてきたワインを奪い取る。


「赤い色があなたの弟の子供の恨みにぴったり」


生まれて初めて感じる残酷な思いで告げた。


頭の上から注いだ真紅の液体がムカつくピンク色のセーターを赤く染めていく。


あまりのことに呆然とするこのさえという最低な女にもう1つの衝撃を与えた。


「もうすぐそんなあなたの姿を見物しに彼氏来るよ、知り合いなんだよね」


呆然と立ち尽くす姿を眺めながら思った。


ゆう、雅紀君頼んだよ。

瀬名の悔しさは私が晴らして見せるからと。

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