10年越しの恋
さやと電話を切った後すぐに雅紀君へ掛け直した。


「もしもし 今どこ?」


「あと10分ぐらいでそっちに着くと思う」


「じゃあ私は先に帰ってないか見に行ってみるから」


歩いて3分、走って1分の距離にある瀬名の家へと急いだ。


3階出窓に明かりが灯っているのを確認して玄関を開く。


「こんばんは! ゆうです」


TVの音も聞こえてこないところをみると瀬名の両親はまた不在なのだろうと推測出来た。


「おじゃまします」


勝手を知った足取りで階段を駆け上がると部屋からは瀬名が大好きなアーティストの曲が響いている。


「入るよ」


ドアを開けると数本のビールの空き缶が転がった床の上で瀬名が小さく丸くうずくまっていた。


「瀬名!」


駆け寄って膝の上に仰向けにした顔は真っ青でその体の下には銀色の薬のシートがぺちゃんこになっている。


「瀬名!!!!」


夢中で肩を掴んで体を揺らし続けた。




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