10年越しの恋
翌朝たまらないのどの渇きに目を覚ました。
立ち上がろうとすると目が回って仕方がない。
二日酔いどころの騒ぎではなくて、昨夜の行動を後悔してもしきれない気分の悪さだった。
這うようにして階段を下りて冷蔵庫から冷えた水を取り出し直接口をつけて飲んでいると母の怒鳴り声。
「グラスに移して飲みなさい」
頭痛を増長する母親の声に返事をする元気も失い部屋へと向かおうとするとさらに呼ぶ声が響いた。
「なに」
「昨日の夜ゆうちゃんが手紙を持って来てくれた」
部屋でビールを飲んだ辺りから曖昧な記憶を辿る。
母親の前には見覚えのある封筒があった。
「何も聞かなかったことにするから」
「どういう意味?」
本当はそう望んでいたはずなのに…。
「娘がこんなに苦しんでるのにそんなことしか言えないの? もっと怒るとか、何か言うことあるでしょ」
真実を知った上でのそんな言葉に思わず漏れる本心。
「……」
「なんとか言ってよ」
「私たちに相談しなかったのは瀬名自身が私たちをバカにしてるからじゃないの?」
思いもよらない母の答えに絶句した。
この人は何を言っているのだろう……。
ほんの少しだけ優しい言葉を期待したんだ。
”辛かったね”
たったそんな一言を言って欲しかっただけなのに。
本当の意味での悲しみはそんな母からの言葉だったかもしれない。
この瞬間圧倒的な孤独を感じた。
ただ悲しみを共有して欲しかっただけなのに。
この日から鬱の症状は悪化して、私は一人で外出が出来なくなった。
ちょうどこの頃出産ラッシュだったご近所さん。
外に出ると幸せそうに大きなお腹を抱える姿に自分の不甲斐なさを感じる。
生まれたばかりの子供の姿に華ちゃんを重ね合わせて罪悪感を感じた。
どうして私だけ……。
そんな思いに苛まれていったんだ。
立ち上がろうとすると目が回って仕方がない。
二日酔いどころの騒ぎではなくて、昨夜の行動を後悔してもしきれない気分の悪さだった。
這うようにして階段を下りて冷蔵庫から冷えた水を取り出し直接口をつけて飲んでいると母の怒鳴り声。
「グラスに移して飲みなさい」
頭痛を増長する母親の声に返事をする元気も失い部屋へと向かおうとするとさらに呼ぶ声が響いた。
「なに」
「昨日の夜ゆうちゃんが手紙を持って来てくれた」
部屋でビールを飲んだ辺りから曖昧な記憶を辿る。
母親の前には見覚えのある封筒があった。
「何も聞かなかったことにするから」
「どういう意味?」
本当はそう望んでいたはずなのに…。
「娘がこんなに苦しんでるのにそんなことしか言えないの? もっと怒るとか、何か言うことあるでしょ」
真実を知った上でのそんな言葉に思わず漏れる本心。
「……」
「なんとか言ってよ」
「私たちに相談しなかったのは瀬名自身が私たちをバカにしてるからじゃないの?」
思いもよらない母の答えに絶句した。
この人は何を言っているのだろう……。
ほんの少しだけ優しい言葉を期待したんだ。
”辛かったね”
たったそんな一言を言って欲しかっただけなのに。
本当の意味での悲しみはそんな母からの言葉だったかもしれない。
この瞬間圧倒的な孤独を感じた。
ただ悲しみを共有して欲しかっただけなのに。
この日から鬱の症状は悪化して、私は一人で外出が出来なくなった。
ちょうどこの頃出産ラッシュだったご近所さん。
外に出ると幸せそうに大きなお腹を抱える姿に自分の不甲斐なさを感じる。
生まれたばかりの子供の姿に華ちゃんを重ね合わせて罪悪感を感じた。
どうして私だけ……。
そんな思いに苛まれていったんだ。