10年越しの恋
焼きそばまでしっかりと平らげた後は芝生に寝そべる人、なぜか用意されていたバトミントンを始める人とそれぞれが思い思いに時間を過ごす。

いつも仲良くつるんでいる江崎、大野、藤井君の3人は飲み続けながらなにやら熱く語っている。

私は三井さんと二人で簡単な後片付けをしていた。


「どう一人で仕事始めてみて」


「まだ何が分からないかも分からないというか、新しい処理を目の前にするたびにあたふたしてます」


「そうだよね。でも2か月もすればもう後は毎月同じ処理の繰り返しだからすぐに慣れるよ」



「だといいんですけど。そういえばもう新しい仕事は決まってるんですか?」


「5年も頑張って働いたから少しゆっくりしてから考えようと思って」


何か社内でのことが原因で退社するんだろうなと感じてはいたけどあえて聞かないでおく。


「そうですよね、旅行とか楽しんじゃってください」


当たり障りのないように答えた。


「美奈ー、瀬名ちゃん。片付けなんて後でいいからこっちで一緒に飲もう!」


向こうから大きな江崎君の声。


「酔うといつもあんな風に何時間でも飲み続けるんだから。適当にあしらってもいいからね」


軽い足取りで3人のところへと駆けだした後ろをゆっくりと追いかけた。


4人が楽しげに思い出話を繰り広げるのを聞きながら空を見上げると徐々に夕方の表情を見せ始めている。

お酒で火照った顔に少し冷たい5月の風が心地よかった。

そのままぼっとしているとポケットで携帯が震えるのに気付いて慌てて立ち上がった。


「もしもし」


「俺だけど、まだ終わんないの?」


不機嫌そうな雅紀の声に時計を見ると約束の時間を10分過ぎている。


「ごめん。もう抜けても平気だと思うからすぐに行く」


「近くまで来てるから場所教えて」


今いる河原を伝えて電話を切った。


「江崎さん… 友達との待ち合わせの時間だから先に帰ります。今日は楽しかったです」


「抜けんのー」


「ほんとごめんなさい。また来週からよろしくお願いします」


みんなに頭を下げると急いで雅紀の元へと向かった。

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