10年越しの恋
6月は雨の季節。暦の上で一番嫌いな月。
気温は肌寒いのに電車の中は湿気でじめっとして蒸し暑さすら感じるし、空気も重く息苦しく感じる。
1日中灰色の空は朝も昼も変わりがなくそこに閉じ込められている感じがして憂うつだ。
2か月目を迎えた仕事は慣れてくると三井さんの言ってた通り毎日が同じルーティーンワーク。
前日の夕方に現場から届けられた領収書を経理ソフトのフォーマットに整理し、決められた期日に請求書を作成する。
誰もいない昼間にはネットで遊ぶ余裕すら出来てきた。
7月になるとやっと空は夏らしい色を帯び始めて太陽が元気になってきた。
朝の通勤時間はまだ風が心地よくて、駅から会社までの10分間が1日で1番楽しい時間。
歩くのが嫌いではない私は早く家を出てひと駅手前から散歩を兼ねたウォーキングをする日もあった。
そうして今日も歩こうと1つ手前の駅で電車を降りて先を急ぐ人を避けるようにのんびりとホームを歩いていると名前を呼ぶ声が聞こえた。
声がする方向に目を向けてみても知っている顔は目に入らない。
「瀬名ちゃん」
人違いだろうと階段を降りようとした時に腕を掴まれた。
目の前には髪をきゅっと一つに結った快活そうな女の子。
「えっと…」
「さやの友達だよね! 私1度大学に遊びに行ったことあって、その時に食堂で」
そう言われても思い出せない私にたたみかける様に話し続ける。
「会社この近くなんだ。近いうちにご飯でもどう?」
「あの…」
「まあいいから。これ携帯の番号だから! 暇な時に電話して」
呆然としたまま元気に階段を降りる後姿を見送った。
受け取った名刺には高橋咲と記されている。
誰だっけ…。
考えながら会社への道を急いだ。
気温は肌寒いのに電車の中は湿気でじめっとして蒸し暑さすら感じるし、空気も重く息苦しく感じる。
1日中灰色の空は朝も昼も変わりがなくそこに閉じ込められている感じがして憂うつだ。
2か月目を迎えた仕事は慣れてくると三井さんの言ってた通り毎日が同じルーティーンワーク。
前日の夕方に現場から届けられた領収書を経理ソフトのフォーマットに整理し、決められた期日に請求書を作成する。
誰もいない昼間にはネットで遊ぶ余裕すら出来てきた。
7月になるとやっと空は夏らしい色を帯び始めて太陽が元気になってきた。
朝の通勤時間はまだ風が心地よくて、駅から会社までの10分間が1日で1番楽しい時間。
歩くのが嫌いではない私は早く家を出てひと駅手前から散歩を兼ねたウォーキングをする日もあった。
そうして今日も歩こうと1つ手前の駅で電車を降りて先を急ぐ人を避けるようにのんびりとホームを歩いていると名前を呼ぶ声が聞こえた。
声がする方向に目を向けてみても知っている顔は目に入らない。
「瀬名ちゃん」
人違いだろうと階段を降りようとした時に腕を掴まれた。
目の前には髪をきゅっと一つに結った快活そうな女の子。
「えっと…」
「さやの友達だよね! 私1度大学に遊びに行ったことあって、その時に食堂で」
そう言われても思い出せない私にたたみかける様に話し続ける。
「会社この近くなんだ。近いうちにご飯でもどう?」
「あの…」
「まあいいから。これ携帯の番号だから! 暇な時に電話して」
呆然としたまま元気に階段を降りる後姿を見送った。
受け取った名刺には高橋咲と記されている。
誰だっけ…。
考えながら会社への道を急いだ。